インプラントとは?

インプラントは、歯科の世界に限った用語ではありません。
身体の中に入れること、若しくは入れる物のことを言います。
歯科では、顎の骨の中に入れる人工の歯の根っこのことと考えてください。

デンタルインプラントとは

人工歯根のことを英語ではデンタルインプラント(dental implant)とよび、歯科におけるインプラント治療とは、一般的に人工歯根によって新しい歯を作ることです。

手順としてはまず、あごの骨(顎骨)にチタン製の人工歯根(フィクスチャー)を埋入します。埋め込まれたインプラントが顎の骨と結合するのを待ちます(平均6〜12週間)。インプラントの周囲を新しい骨がとり囲み、インプラントと骨の直接結合が得られたのを確認した後、人工歯根の上に天然の歯と同じような見た目の人工歯を取り付けます。

インプラントは顎の骨に固定されていますので、天然歯と同じ様な噛み心地、見た目を手に入れる事ができます。

歯が1本も無い総入れ歯の方でも、上顎、または下顎に最少4本のインプラントを埋入し、そのインプラントに全ての人工歯を固定するオールオン4と言う治療法もあります。

食べられないもの(噛めないもの)がほぼ無くなるため、バランスの取れた食事が可能になり食事が楽しくなります。入れ歯がズレたり外れる心配もなく、入れ歯特有の喋りにくさも無いため積極的な生活を楽しめる様になったと言われる患者さまが多くいらっしゃいます。インプラント治療はQOL(生活の質、生きる上での満足度)の向上につながります。

インプラントの材料であるチタンは生体適合性が高い為、医療分野で幅広く使われています。(骨折の治療におけるプレートやボルト、人工股関節等)

1950年頃、スウェーデンのブロネマルク博士がチタン製のインプラントと骨が結合する事(オッセオインテグレーションと言います)を発見しました。現在では広く普及したインプラント治療は生体に害がない事が実証されています。

当院*では、日本で使用が認められている数十社のインプラントの中でも世界的にシェアが大きいノーベルバイオ社とストローマン社、ジンマー社のインプラントシステムを使用しています。これらのインプラントシステムは基礎研究や臨床研究における学術論文によって高い安全性と生体との生着率が証明されています。

※ *「当院」とは、当サイト運営元「いのうえまさとし歯科医院」を指します。

歯を失った時の治療法は3つ

歯を失った時の治療法はブリッジ、(部分)入れ歯、インプラント、の3つです。どの治療法が自分に合っているのか、メリット・デメリットを確認して選びたいですね。

インプラント

インプラントのメリット
・両隣の歯に負担をかけないので、両隣の歯の寿命を損ねない。
・しっかり噛める。
・顎の骨に固定されているのでズレたり外れる心配がない。
・顎の骨にインプラントを埋入する事により、顎の骨が痩せるのを防ぎ、若々しい口もとを保つ事が出来る。

インプラントのデメリット
・手術の必要がある。
・自費治療のため、治療費が高額になる。
・治療期間が他の治療法に比べると長い。
・ケアをしないと歯周病の様なインプラント周囲炎になる。

ブリッジ

ブリッジとは、失った歯とその両隣の歯の3本分の一体型の被せ物を装着する治療法です。被せ物を付ける為に、両隣の歯を削ります。

ブリッジのメリット
・固定されているので入れ歯の様にズレたり外れる心配がない
・手術の必要がない。
・治療期間が短い

ブリッジのデメリット
・失った歯の部分を支える為に両隣の歯に負担がかかる。
・削られた両隣の歯は虫歯や歯周病になりやすく、この歯がダメになるとさらに大きなブリッジや部分入れ歯にする必要があり、歯の寿命が短くなる可能性がある。
・保険適用のブリッジは銀歯になるので見た目が良くない。

入れ歯

部分入れ歯とは、失った歯の代わりになる人工歯を、両隣の歯に留め金で引っ掛けて人工歯を装着する治療法です。総入れ歯とは、上顎、下顎のどちらかまたは全ての歯を失った方のための装置です。総入れ歯は床(義歯床)と言うピンク色の合成樹脂の上に人工歯を並べたものです。床が歯ぐきと口蓋の粘膜に吸着する事で入れ歯を安定させます。

入れ歯のメリット
・手術の必要がない。
・治療期間が短い
・保険適用可能である。

入れ歯のデメリット
・噛む力が天然歯に比べて7〜8割弱くなる。
・入れ歯の中に食べものがはさまり、痛かったりする。
・歯根がなくなる事で、顎の骨が痩せてくる。
・時間とともに入れ歯が合わなくなってくる。
・両隣の歯に金属の留め金を掛けて支えるので、負担がかかる。(部分入れ歯)
・留め金と歯の間に歯垢が溜まり、虫歯や歯周病になりやすい。(部分入れ歯)
・口蓋部分が入れ歯に覆われるので、味や温度が感じにくい。(総入れ歯)

インプラント治療の流れ

1) 診査と治療計画
インプラントの治療においては術前の診査と治療計画がとても大切です。インプラントを埋入する骨の量、質、粘膜の状態だけでなく、糖尿病や心疾患などの持病についても把握しておく必要があります。時には持病の主治医の先生との連携が必要となる場合もあります。虫歯や歯槽膿漏歯がある場合には、そちらの治療を行ってからインプラント治療を開始します。またインプラントの手術を行う前に、正しい歯磨き指導や訓練、歯石の除去が必要となります。患者様によっては手術前に保存が不可能な歯を抜歯したり、手術前または手術後に歯列矯正治療をおすすめする場合もあります。

2) 手術前の準備
インプラントの埋入前には歯の型をとり、最終的な出来上がりの状態を模型上で再現し、サージカルステントやレントゲンステントを作製し、残っている骨の状態をレントゲンやCTで詳しく調べます。これらの資料を参考にして骨を増やす必要性、インプラント(フィクスチャー)埋入部位、インプラントの被せ物(人工歯)の形態を診断します。

3)手術

【一次手術】
あごの骨にインプラントを埋入します。
  
【安静期間】
インプラントがインプラント周囲の骨と結合するまで2〜4ヶ月、待ちます。
  
【二次手術】
歯茎を切開してインプラントと骨がしっかりと結合した事を確認した後、アパットメント(インプラントと人工歯を連結させる部品)をインプラントに装着します。
  
【被せ物(人工歯)の装着】  
セラミックで作製した被せ物(人工歯)をアパットメントに装着して完了です。

4)定期検診(メンテナンス)
インプラント治療が終了した後は1年に2〜3回のメンテナンスが必要です。
インプラントは虫歯にはなりませんが、プラークや歯石は付着します。ご自身でのホームケアはもちろん大切ですが、どうしても歯ブラシが届かない部分は歯科医院でのクリーニングが必要です。
またインプラント自体の定期検診としてインプラントのネジの緩みがないか、噛み合わせに不具合はないか、歯茎に問題は無いかなどのチェックをします。

インプラントを埋入する骨がない場合

インプラントを埋入する必要のある場所に骨が少ない場合には、骨移植や人工の骨で造骨をする必要があります。これによって埋入するインプラントを長期的に機能させる事が可能となります。

インプラント治療期間

インプラント治療では、まずインプラントが骨と結合するのに、普通は、下顎で2~4ヵ月、上顎で4~8ヵ月かかります。噛み合わせの治療が必要な場合は、1年以上かかることもあります。

インプラント治療に適さない患者さま
  1. 一般の外科手術に耐えられない方
  2. 抗がん剤治療を受けられている方
  3. 最近、口腔周囲に放射線治療を受けられた方
  4. あごの骨の量が少なく造骨してもインプラント埋入が困難な方
  5. チタン(タイタニウム)に対する金属アレルギーのある方。
  6. 上部構造に使用する貴金属に対するアレルギーのあるかた。
  7. 喫煙される方で、インプラント手術前術後の禁煙が出来ない方。
  8. 重度の歯周病がコントロールされていない方

上記に当てはまる方でもインプラント治療が可能な場合もありますので、実際に手術が可能であるかどうかは、歯科医師にご相談ください。

知っておきたいインプラントのリスク

インプラントは天然歯と同じような機能性、審美性を備え他の歯も傷つけないと言う利点がありますが、治療を選択する前にリスクについても知っておきましょう。 インプラントがブリッジや入れ歯治療と最も違う点は外科手術を伴う所です。

手術に伴うリスク

インプラント手術の結果、重度な後遺症が残る事は稀ですが、以下のようなトラブルが生じる可能性がある事を十分ご理解ください。

(1)手術中

・出血
・神経や血管の損傷
・ドリリングによる熱で骨にダメージを与える
・上顎洞へのインプラントの迷入

【この様なトラブルを防ぐ為の処置】
・術前のCT検査において神経や血管の位置や骨の厚みを確認した上で、インプラント埋入部位の計画をする。
・ドリリングの際は適切に生理食塩水をかける。

(2)手術後

・痛みや腫れ、しびれ
インプラント手術では通常、歯茎を切開しますのである程度の痛みや腫れ、しびれが生じます。処方された抗生剤と痛み止めを服用して頂き、通常は数日で症状が落ち着いてきます。一方、症状が強くなっていく場合は歯科医院で診察を受けてください。細菌感染の可能性があります。その場合は抗生剤の投与を継続します。

・インプラントが骨と結合しない
インプラントと骨が結合しない要因はいくつかあります。前述のドリリングによる熱によって骨がダメージを受けた場合やインプラント周囲の組織が細菌に感染した場合が手術による主な原因です。
適切な治療技術を持つ歯科医師と徹底した感染対策によってこの様なトラブルは防ぐ事ができます。

手術による原因の他にも次の様な要因があります。
患者様の顎の骨の厚み不足、喫煙による影響、歯周病です。
特にタバコを吸うと血管が収縮することによって、血流が悪くなり治癒にも悪影響があるだけでなくインプラント周囲の骨結合を阻害しますので、禁煙を強くお勧めします。
歯周病の方は歯周病の治療をした上でのインプラント治療となります。

人工歯(上部構造)のトラブル

インプラントの上に被せる人工歯はセラミック製(陶材)が主です。人工歯は割れたり欠けたりする事があります。この場合は人工歯の修理、作り直しをする事が可能な場合もありますので、取れてしまった人工歯がお手元にあれば診察時に持ってきてください。

インプラントのメンテナンス

治療後のインプラントの残存率は90%以上と言われていますが、インプラントを長くお使いいただく為には1年に2〜3回のメンテナンスが不可欠です。

定期メンテナンスでは以下のチェックをします。

・インプラントのネジの緩みのチェック
インプラントのネジに緩みが生じると人工歯のぐらつき、破損の原因となります。

・噛み合わせのチェック
お口の中の噛み合わせに変化が生じると、インプラントに負荷がかかり寿命を損なう事があります。また無意識に歯ぎしりなどをされている場合も、インプラントに悪影響がありますので、マウスピースの作製をいたします。

・口腔衛生のチェック
天然歯が歯周病になる様に、インプラントはインプラント周囲炎という症状を起こし抜け落ちてしまう事があります。インプラント周囲炎とは、歯周病菌による炎症でインプラント周囲の骨が溶ける現象です。
他の歯からの歯周病菌の影響があったり、プラークがインプラント周囲に付着していたりするとインプラント周囲炎を起こす事がありますので、定期的にメンテナンスする必要があります。

もちろん患者様ご自身によるホームケアも大切ですが、どうしても磨けない部分や点検できない部分は歯科医院によるメンテナンスチェックにお任せください。

記事監修 : 井上 祐利
(京都市左京区 いのうえまさとし歯科医院院長)
1965年京都生まれ。大阪大学歯学部を卒業し、京都大学口腔外科学教室にて研修後、関連病院にて研鑽。京都大学大学院医学研究科外科系専攻(再生医科学研究所臓器再建応用分野)にて医学博士取得。京都大学にて、再生治療分野における特許を取得。同研究所で歯牙の再生とインプラントについて指導、研究を行う。2001年11月、京都市左京区に「いのうえまさとし歯科医院」開院。

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